尖閣(釣魚)事件(8)政権崩壊へ自滅か
2010-11-18
編集された「44分ビデオ」流出によるその後の政治(マスコミ)状況は、
o さらに反中の盛り上がり。
o 告白保安官をヒーロー扱い。
o ビデオ非公開、漏洩者は極悪とした仙石官房長官叩きの開始。
o 外交全般に波及したことによる菅政権攻撃の開始。
と言ったところか。
つまり、この事件は終息しないで、政権崩壊に拡大すると思われる。
尖閣(釣魚)問題の歴史的経緯と、今回の拿捕~逮捕~釈放に至る仕組みは「仕組まれた尖閣か」「敵は中国ではない」「尖閣(釣魚)は領土問題」により、解明してきた。
日中国交回復と沖縄返還に伴い、鄧小平提案により、日本側の実効支配を黙認した形で「棚上げ」平和運用であったこと。
日本側が5月に運用改訂し、従来追い出しか、拿捕しても即強制退去だったルールを9月7日一方的に改変し、拿捕~逮捕-勾留-起訴へと突き進んだこと。
民主代表選直後にアーミテージが仙石氏らの政権幹部に、対中強攻策を指導。
その後、中国の強い抗議とフジタ社員の身柄留置に、日本側は耐え切れず、NYでの首脳外相会議で「平和交渉」を示唆されるが、「交渉なし」で釈放するとともに、「政治介入」も「指揮権発動」も否定。日中関係の政治判断は検察がしたと言う奇怪な結論に導く。
この後横浜APECに向けて、ビデオ流出になるわけである。
元来、情報公開するなら全てのビデオでなければならないが無理。
この編集して流出された「44分ビデオ」は、公判維持には不十分でも、マスコミの煽動には十分であることに注意するべきである。
最初から爆弾を仕掛けられていたのだ。
この編集された「44分ビデオ」が早期に流出していたなら、船長起訴-日中完全対立-局地的武装衝突の危険が迫っていただろう。
600時間のビデオをまるごと公開するわけもない。公開するなら確実に「意図的に編集」された代物になるのだ。
「44分ビデオ」「政治介入」、「指揮権発動」の3点セットで巨大マスコミに煽動されたら、政権は潰れる。
追い詰められた仙谷は、3点全てを否定せざるを得なかった。最初から矛盾の行動であり、自滅の道だったと考える。
そして、今その否定した事実が、菅政権を追い詰めている。
アメリカ軍産複合体と合体した巨大マスコミ、官僚、検察はシナリオに従い、前原政権に進んでいるようだ。
追記
この事件がもたらした内外の影響については「あまりにひどい尖閣事件」「イラン石油開発から撤退せよ」に書いてきたので御覧ください。
また、以下の孫崎氏の見解も的確と考えるので一部引用します。
孫崎享:中国漁船衝突事件 政府の判断ミスで日本が失ったもの
2010年10月2日 ビデオニュース・ドットコム
(引用開始)
政府は情勢判断を誤った
神保: 中国の漁船が尖閣諸島沖で、海上保安庁の巡視船と衝突して、その後の船長の逮捕、釈放が大きな問題になっています。領土をめぐる問題なので、やむをない部分もあるかもしれませんが、両国とも若干感情的な反応をしているようです。
しかし、日本政府としてはどういう状況判断や戦略に基づいて今回のような逮捕、釈放を行ったのかを、きちんと冷静に見ていく必要があると思います。孫崎さんは、この状況をどう見ていらっしゃいますか。
孫崎: まず、拿捕をすることが良かったのか、というところが議論のスタート地点です。尖閣諸島の問題というのは非常に微妙な問題です。日中国交回復の当時から、のどに刺さった骨のような問題でした。当時のトウ小平副首相が、この問題は非常に複雑で、お互いに主張し合うと日中関係がおかしくなるから「棚上げ」にしようと述べました。
この「棚上げ」は、実は、中国にとって非常につらいことです。「棚上げ」するということは、つまり、日本の実効支配を認めることだからです。
神保: 「棚上げ」は、日本にとって有利な取り決めだったということですか。
孫崎: そうです。日本が実効支配を続け、そして、領土問題については話さないということだから、日本に有利な形です。この「棚上げ」が、これまでの日中の基本的な態度でした。
菅政権になって、これが少し変わりました。菅政権は初閣議で、「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」という答弁書を閣議決定しました。そうすると、国内法で処理して良いということになり、入ってくる者は侵入者とみなすので、捕まえて良いということになります。
領土問題で係争中であれば、非常に両方とも慎重になるので、拿捕ではなくて帰ってもらうという圧力をかけて、係争にしません。そういった対応をこれまでしてきたのに拿捕したというのが、今回一番のミスだったと思います。
非常に大事なことは、拿捕をしたときに日中関係が危機になるのかどうかについて、政権は非常に甘い見通ししかもっていなかったことです。外務省報道官も、今回の事件で日中関係がおかしくなることはないと話しました。
そして、おそらくこのラインで、官房長官に説明をし、その認識で決定したのだと思います。拿捕が重大な日中間の外交案件になるという認識がなかったという情勢判断の誤りが、今回の一番の問題だったと考えます。
日本が失ったものとは何か
神保: 今回の事件はまだ完全に収束していないので、現時点で最終的にどのような影響が出るかを見極めるのは難しそうですが、今回の事件で日本が得たもの、失ったものは何だと思いますか。
孫崎: 日本が得たものは非常に少ないです。アメリカ、中国は両方とも得たものが大きいと思います。
これまで東アジアでは日本と中国が拮抗しているという認識が、広く共有されてきたと思いますが、今回の件で、中国の方が圧倒的に強いことが明らかになったと思います。船長の釈放についても、国際的には日本が中国の圧力に屈して釈放したと受け止められています。日中関係では、完全に中国が得をしたと思います。
アメリカはどうかというと、日本国内では対中警戒論が出て、アメリカとの軍事協力を今まで以上に受け入れる素地がでてきました。これは、アメリカにとってプラスです。このように、アメリカと中国が得をして、日本が損をしたということではないかと考えます。
神保: 日本が国内法を適用して、尖閣諸島は日本の領土だと主張したことによって、逆に尖閣諸島が係争地であることが、世界的に注目されてしまったということでしょうか。
孫崎: そうですね。日本人が気を付けなければいけないのは、中国国内では、特に軍などは、先ほど述べた「棚上げ」論には反対です。中国の国民や軍は、尖閣諸島は中国のものだと主張し、取り戻したいと思っていますが、トウ小平などのカリスマ的な政治家が「棚上げ」にしてきました。だからできれば、「棚上げ」を排除したいと思っている人が中国国内にはいます。今回の日本の行動を契機として、中国の軍部などは、「棚上げ」をやめようという人も出てきているといいます。
神保: これまでの「棚上げ」は、実効支配をしている日本に有利なアレンジメントだったのに、今回下手をすると尖閣をめぐる情勢が五分五分になってしまった可能性があるということでしょうか。
孫崎: そうです。そしてこの先は、お互いに領有権を主張しようではないか、ということになります。その先どうなるかと考えると、力関係で決着をつけようということになるでしょう。そうなると、数年後には中国の軍事力は圧倒的だから、ここで日本は戦えるはずがありません。
アメリカも、必ずしも出てこないでしょう。だから、今回日本が手をつけたことによって、実は、日本が優位だった尖閣の地位を、ものすごく危くしたといえるのではないでしょうか。
出演者プロフィール
孫崎 享 (まごさき・うける)
元外務省国際情報局長。1943年旧満州国生まれ。66年東京大学法学部中退、外務省入省。英国、ソ連、米国、イラク、カナダ勤務を経て、ウズベキスタン大使、国際情報局長、イラン大使などを歴任。02年防衛大学校教授に就任、09年3月退官。著書に『日米同盟の正体 迷走する安全保障』、『情報と外交』など
神保 哲生(じんぼう・てつお)
ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表。1961年東京生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て93年に独立。99年11月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』、『ビデオジャーナリズム─カメラを持って世界に飛び出そう』、『ツバル-温暖化に沈む国』、『地雷リポート』など。
o さらに反中の盛り上がり。
o 告白保安官をヒーロー扱い。
o ビデオ非公開、漏洩者は極悪とした仙石官房長官叩きの開始。
o 外交全般に波及したことによる菅政権攻撃の開始。
と言ったところか。
つまり、この事件は終息しないで、政権崩壊に拡大すると思われる。
尖閣(釣魚)問題の歴史的経緯と、今回の拿捕~逮捕~釈放に至る仕組みは「仕組まれた尖閣か」「敵は中国ではない」「尖閣(釣魚)は領土問題」により、解明してきた。
日中国交回復と沖縄返還に伴い、鄧小平提案により、日本側の実効支配を黙認した形で「棚上げ」平和運用であったこと。
日本側が5月に運用改訂し、従来追い出しか、拿捕しても即強制退去だったルールを9月7日一方的に改変し、拿捕~逮捕-勾留-起訴へと突き進んだこと。
民主代表選直後にアーミテージが仙石氏らの政権幹部に、対中強攻策を指導。
その後、中国の強い抗議とフジタ社員の身柄留置に、日本側は耐え切れず、NYでの首脳外相会議で「平和交渉」を示唆されるが、「交渉なし」で釈放するとともに、「政治介入」も「指揮権発動」も否定。日中関係の政治判断は検察がしたと言う奇怪な結論に導く。
この後横浜APECに向けて、ビデオ流出になるわけである。
元来、情報公開するなら全てのビデオでなければならないが無理。
この編集して流出された「44分ビデオ」は、公判維持には不十分でも、マスコミの煽動には十分であることに注意するべきである。
最初から爆弾を仕掛けられていたのだ。
この編集された「44分ビデオ」が早期に流出していたなら、船長起訴-日中完全対立-局地的武装衝突の危険が迫っていただろう。
600時間のビデオをまるごと公開するわけもない。公開するなら確実に「意図的に編集」された代物になるのだ。
「44分ビデオ」「政治介入」、「指揮権発動」の3点セットで巨大マスコミに煽動されたら、政権は潰れる。
追い詰められた仙谷は、3点全てを否定せざるを得なかった。最初から矛盾の行動であり、自滅の道だったと考える。
そして、今その否定した事実が、菅政権を追い詰めている。
アメリカ軍産複合体と合体した巨大マスコミ、官僚、検察はシナリオに従い、前原政権に進んでいるようだ。
追記
この事件がもたらした内外の影響については「あまりにひどい尖閣事件」「イラン石油開発から撤退せよ」に書いてきたので御覧ください。
また、以下の孫崎氏の見解も的確と考えるので一部引用します。
孫崎享:中国漁船衝突事件 政府の判断ミスで日本が失ったもの
2010年10月2日 ビデオニュース・ドットコム
(引用開始)
政府は情勢判断を誤った
神保: 中国の漁船が尖閣諸島沖で、海上保安庁の巡視船と衝突して、その後の船長の逮捕、釈放が大きな問題になっています。領土をめぐる問題なので、やむをない部分もあるかもしれませんが、両国とも若干感情的な反応をしているようです。
しかし、日本政府としてはどういう状況判断や戦略に基づいて今回のような逮捕、釈放を行ったのかを、きちんと冷静に見ていく必要があると思います。孫崎さんは、この状況をどう見ていらっしゃいますか。
孫崎: まず、拿捕をすることが良かったのか、というところが議論のスタート地点です。尖閣諸島の問題というのは非常に微妙な問題です。日中国交回復の当時から、のどに刺さった骨のような問題でした。当時のトウ小平副首相が、この問題は非常に複雑で、お互いに主張し合うと日中関係がおかしくなるから「棚上げ」にしようと述べました。
この「棚上げ」は、実は、中国にとって非常につらいことです。「棚上げ」するということは、つまり、日本の実効支配を認めることだからです。
神保: 「棚上げ」は、日本にとって有利な取り決めだったということですか。
孫崎: そうです。日本が実効支配を続け、そして、領土問題については話さないということだから、日本に有利な形です。この「棚上げ」が、これまでの日中の基本的な態度でした。
菅政権になって、これが少し変わりました。菅政権は初閣議で、「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」という答弁書を閣議決定しました。そうすると、国内法で処理して良いということになり、入ってくる者は侵入者とみなすので、捕まえて良いということになります。
領土問題で係争中であれば、非常に両方とも慎重になるので、拿捕ではなくて帰ってもらうという圧力をかけて、係争にしません。そういった対応をこれまでしてきたのに拿捕したというのが、今回一番のミスだったと思います。
非常に大事なことは、拿捕をしたときに日中関係が危機になるのかどうかについて、政権は非常に甘い見通ししかもっていなかったことです。外務省報道官も、今回の事件で日中関係がおかしくなることはないと話しました。
そして、おそらくこのラインで、官房長官に説明をし、その認識で決定したのだと思います。拿捕が重大な日中間の外交案件になるという認識がなかったという情勢判断の誤りが、今回の一番の問題だったと考えます。
日本が失ったものとは何か
神保: 今回の事件はまだ完全に収束していないので、現時点で最終的にどのような影響が出るかを見極めるのは難しそうですが、今回の事件で日本が得たもの、失ったものは何だと思いますか。
孫崎: 日本が得たものは非常に少ないです。アメリカ、中国は両方とも得たものが大きいと思います。
これまで東アジアでは日本と中国が拮抗しているという認識が、広く共有されてきたと思いますが、今回の件で、中国の方が圧倒的に強いことが明らかになったと思います。船長の釈放についても、国際的には日本が中国の圧力に屈して釈放したと受け止められています。日中関係では、完全に中国が得をしたと思います。
アメリカはどうかというと、日本国内では対中警戒論が出て、アメリカとの軍事協力を今まで以上に受け入れる素地がでてきました。これは、アメリカにとってプラスです。このように、アメリカと中国が得をして、日本が損をしたということではないかと考えます。
神保: 日本が国内法を適用して、尖閣諸島は日本の領土だと主張したことによって、逆に尖閣諸島が係争地であることが、世界的に注目されてしまったということでしょうか。
孫崎: そうですね。日本人が気を付けなければいけないのは、中国国内では、特に軍などは、先ほど述べた「棚上げ」論には反対です。中国の国民や軍は、尖閣諸島は中国のものだと主張し、取り戻したいと思っていますが、トウ小平などのカリスマ的な政治家が「棚上げ」にしてきました。だからできれば、「棚上げ」を排除したいと思っている人が中国国内にはいます。今回の日本の行動を契機として、中国の軍部などは、「棚上げ」をやめようという人も出てきているといいます。
神保: これまでの「棚上げ」は、実効支配をしている日本に有利なアレンジメントだったのに、今回下手をすると尖閣をめぐる情勢が五分五分になってしまった可能性があるということでしょうか。
孫崎: そうです。そしてこの先は、お互いに領有権を主張しようではないか、ということになります。その先どうなるかと考えると、力関係で決着をつけようということになるでしょう。そうなると、数年後には中国の軍事力は圧倒的だから、ここで日本は戦えるはずがありません。
アメリカも、必ずしも出てこないでしょう。だから、今回日本が手をつけたことによって、実は、日本が優位だった尖閣の地位を、ものすごく危くしたといえるのではないでしょうか。
出演者プロフィール
孫崎 享 (まごさき・うける)
元外務省国際情報局長。1943年旧満州国生まれ。66年東京大学法学部中退、外務省入省。英国、ソ連、米国、イラク、カナダ勤務を経て、ウズベキスタン大使、国際情報局長、イラン大使などを歴任。02年防衛大学校教授に就任、09年3月退官。著書に『日米同盟の正体 迷走する安全保障』、『情報と外交』など
神保 哲生(じんぼう・てつお)
ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表。1961年東京生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て93年に独立。99年11月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』、『ビデオジャーナリズム─カメラを持って世界に飛び出そう』、『ツバル-温暖化に沈む国』、『地雷リポート』など。
- 関連記事