アベノミクスのせいで国民は豊かになれない:中原
2014-12-02

ガソリン価格
アベノミクスのせいで庶民は豊かになれない 原油価格は、将来50ドル割れの可能性も 12/2 中原圭介 東洋経済オンライン
2013年時点で、すでに原油需要の減少を予想
私は、東洋経済新報社から2013年3月に出版した拙書『アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!』の冒頭で、アベノミクスが間違いなく失敗すると書き、その理由を述べました。
その後で、日本が今後の世界的なエネルギー価格の下落に対して取るべき経済戦略を間違わなければ、日本の経済は予想以上に復活するだろうという経済シナリオを書き上げました。
当時はOPEC(石油輸出国機構)が原油需要の見通しを上方修正するなど、世界中の主要機関が原油価格の上昇トレンドは変わらないという見通しを立てているなかで、私は昨年6月20日のコラム「シェール革命に翻弄される国々」でも書いた通り、経済的合理性から原油価格の下落を予想していました。しかし、当時は、多方面から賛同を得ることができませんでした。
まずは、若干長くなって恐縮ですが、経済的合理性とは何かを知っていただくために、拙書の136ページ~138ージの文章を引用させていただきます。
(以下、拙書から引用)
アメリカの天然ガス価格がこのまま低価格で安定を続ける上に、アメリカの輸出規制が撤廃され海外へも輸出が拡大されるようになると、天然ガスの需要が増加すると同時に、原油の需要が減少するという現象が世界的に広がっていきます。
今のところは、アメリカ国内の原油の需要が減少しているのを背景に、アメリカのWTI原油価格のみが世界の他地域に比べて安い状況にありますが、やがては欧州の北海ブレンド原油価格やアジアの中東産ドバイ原油価格にも大きな下落圧力が働いていくでしょうし、ロシアが輸出している原油価格も下落傾向が鮮明になっていくことは避けられないでしょう。
その一方で、アメリカの天然ガス指標価格であるヘンリーハブの低価格に引っ張られるように、英国の指標価格であるNBP価格やロシアの天然ガスの輸出価格、日本の液化天然ガスの輸入価格などの価格が大きく下落していくことも確実に起こっていくでしょう。
(中略)原油にしても天然ガスにしてもアメリカの指標価格を後追いするように全体の価格が下がっていくのが、経済的合理性から言っても自然な流れではないのでしょうか。原油価格などは2017年までには50ドルを割り込んでもおかしくはないのです。引用終わり)
以上のような原油価格の下落予測は、それから1年9カ月ほど経過して、おおよそ想定していたように下落が進んできているように思われます。
ただし、OPECによる減産見送りによって、直近の下落のペースが速まっているのは、イレギュラーな価格下落に該当します。
ですから、原油価格はどこかで多少戻してから、再びじりじりと下落が始まるだろうと予想しています。
よくメディアなどでは、「アメリカのシェールオイルの採算コストは70ドル前後だから、70ドルより下がり続けることはないだろう」という意見が聞かれます。先日、人気テレビ番組でもコメンテーターが同じ趣旨の話をしていましたが、こういった意見は間違った認識のうえに成り立っています。
拙書でも指摘しているように、シェール関連の技術革新は日々進歩していて、採算コストは今後も大きく下がっていくからです。
原油価格は50ドルを割り込んでもおかしくない
おそらくは、ここ数年以内に採算コストは40ドル前後まで下がってくるでしょう。
だから、「数年以内に原油価格が50ドルを割り込んでもおかしくない」という予想が立てられるわけです。
その結果として、先進国経済は低インフレあるいはデフレから抜け出せなくなるわけですが、それならば「どうして低インフレ、デフレが悪い」と言えるのでしょうか。
エネルギー価格が下がれば、先進国の庶民と言われる人々の生活コストが下がり、暮らし向きが楽になるはずなのです。
「経済政策とは誰のために存在するのでしょうか?」
国民の層で言えば、富裕層のためか、中間層のためか、あるいは貧困層のためか。
企業規模で言えば、大企業のためか、中小企業のためか、中小零細企業のためか。
住んでいる場所では、首都圏在住の人々のためか、地方在住の人々のためか。
アベノミクスを推進する人々は決してそうは言いませんが、アベノミクスは富裕層、大企業のためにやっています。
歴史を学ばない経済識者たちが一般国民を生活苦に追い込む政策を支持してきたために、国民は原油価格下落の恩恵をほとんど受けることができていないのです。
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シェールオイルの油井は数年で枯れてしまうので、どんどん新しい油井を掘削しなければ成らない。
当然、掘り易い所から掘って居るでしょうから、後に成るに従い採掘コストが高く成る。
フラッキングという環境公害の多い方法で採掘していますから、公害対策のコストが年々高く成って行くのではないでしょうか。
「世界最大の産油国」米シェール革命はバブル
http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2014/08/post-3351_1.php